2013年に修成建設専門学校を卒業後、(株)森本組に入社。東北地方に配属となり約3年間施工管理としての経験を積んだ後、2016年に(株)合田建設に入社。創業者の祖父から父が受け継いだ会社で、岡山県玉野市内を中心に土木・建築・管工事などに携わる。2017年12月に代表取締役に就任。会長となった父とともに経営に携わり、会社を牽引している。
私が建設業界に入ろうと決意し、修成に入学したのは26歳のとき。高校卒業後は大阪にある大学に進学し、食品会社で働いていました。そこで3年ほど経った頃、祖父・父と2代続く実家の建設会社を継ぐことになり、基礎から勉強することにしたのです。入学当初、まわりが若い同級生ばかりでなじめるか不安でしたが、意外にギャップを感じることなく、楽しく過ごすことができました。
土木施工管理技士取得のための知識を得られたのはもちろん、測量や丁張りなど実習を通じて学んだことも就職後大いに役立ちました。先生方から学校での学びと現場との違いも実践的に教えていただき、「基礎をしっかり学んでおけば、現場に出てから『こういうことだったのか』とわかる瞬間が来る」とよくアドバイスされたことも思い出に残っています。
修成を卒業した後は経験を積むためゼネコンに就職し、東北地方に配属となってトンネル工事などさまざまな工事に携わりました。特に印象的だったのは、東日本大震災の津波の被災地で行った護岸復旧工事です。私が現場に入ったのは震災から約2年後。すでに工事が進んでいる部分もありましたが、あらゆるものが水にさらわれ、人が誰も住んでいない状態の街を目の当たりにした時には、改めて自然の脅威を実感しました。今後もし同様の災害が起きても被害を防げるよう、工事によって以前より良い状態にしなければならないと、土木工事の重要性を身をもって感じたことを覚えています。
ゼネコンには3年ほど勤め、その後地元の岡山に帰って父が営む合田建設に入社しました。昭和40年に祖父が創業し、50年以上にわたり地域密着で上下水道の工事や堤防の補強、道路の改良などのインフラ整備や、災害復旧、宅地造成などを手がけている会社です。私は現在、老朽化した地域の送水管を切り替える工事を担当しています。工事全体としては5〜6年かけて行う大規模なもので、今回の現場はその一部分にあたる約5ヶ月間の工事です。施工管理として、まずは現場の安全を第一に自社の職人や協力会社の管理を行うとともに、工程や材料の管理などを行っています。他に大切なのが近隣住民の方々とのコミュニケーション。工事が始まる前には必ず近隣のお宅に挨拶に行き、工事の説明などを行ってスムーズに工事が進むよう心がけています。土木の仕事は、自分が手がけた構造物が目に見えてできあがっていく達成感と、それによって社会貢献できる点が魅力。特に当社は地域密着の事業が多いため、道路の幅が広がって地域のみなさんが安全に歩けるようになるなど、日々の暮らしが良くなることに役立っている実感があります。
2017年には代表取締役に就任し、会長となった父とともに会社経営にも携わるようになりました。いち社員として現場管理をしていた頃は自分の現場のことだけを考えていましたが、経営者となり、すべての現場の状況を把握し人員の配置をするようになったほか、資金運用や銀行との折衝、決算関係の業務などにも携わり、より広い視点で仕事を考えるようになりました。社員とその家族の人生を預かる責任の大きさも感じています。
経営者として大切にしているのは「社員が仕事をしたくなる会社」であること。私自身、サラリーマンとして働いていた頃は日曜日の夕方に憂鬱な気分になることもありました。当社ではなるべくそんな気分にさせないよう、私が代表に就任してからは休日を年間で15日ほど増やしたほか、給与体系を改定したり、社員同士の親睦を深める機会をつくったりと、働きやすい環境づくりを進めています。今後もっと環境をよくしていくためには、昔ながらの力仕事ではなく機械を活用することや、より正確で効率的な作業を可能にするICT建設機械の導入などで作業効率をさらにアップさせることが必要です。一朝一夕に実現できることではありませんが、働く環境が重視される時代だからこそ、積極的に取り組んでいきたいと考えています。
近年は異常気象による災害が増加しており、土木工事の重要性が増しています。これまで災害が少ないと言われていた岡山県でも、2018年の西日本豪雨によって大きな被害を受けました。南海トラフ巨大地震への対策工事なども少しずつ行われており、今後はインフラ整備とともに注力していきたいと思います。
そして、創業者である祖父、2代目の父が築き上げてきた信頼や実績を引き継ぎ、時代の変化に柔軟に対応しながら、取引先や地域のみなさん、同業者とより良好な関係を築いていくのが経営者としての目標。最近は同業者や異業種の方々との集まりに参加して先輩経営者の方に話を聞いたり、経営に関する勉強会に出席して見識を広げているところです。また、当社は創業以来「品質へのこだわり」を掲げ、全社員が一丸となって確かなものづくりを行ってきました。公共工事はもちろん、地域のみなさんからお宅の擁壁や宅地造成の工事を直接依頼されることも多く、「安くていいものをつくってくれる」と評価されていることが大きな誇り。この関係を今後も続けていけるようにしたいですね。さらに、働く社員を大切にするのも私の重要な役割。現場での1日の仕事を終え、帰社したら楽しく雑談をしてリラックスする…現在あるアットホームな環境を今後も受け継いでいくとともに、常に会社のあり方を見つめ直し、社員が長く働きたいと思える快適な職場をつくっていきます。
- 【送水管布設工事】
- 岡山県玉野市において、最初の布設から数十年が経過し老朽化した送水管を新しいものに切り替える工事。広範囲で行うため5〜6年の工期が必要となる大規模な工事で、2019年から順次進められている。
- 【護岸工事】
- 岡山県玉野市鴨川の護岸改修工事。集中豪雨での増水で崩落した護岸(200m)を改修した。
- 【宅地造成】
- 岡山県玉野市田井地区の宅地造成工事。今後30軒の住宅が建設される予定。(民間工事)