Creator's File 飛島建設株式会社 大阪支店 尼崎シールド作業所 松本 亮の仕事

飛島建設株式会社 大阪支店 尼崎シールド作業所 松本 亮 Toru Matsumoto

1984年土木工学科卒業。卒業から約30年にわたり、飛島建設株式会社でシールド工事のキーパーソンとして、さまざまなビッグプロジェクトに携わっている。2003年から作業所所長に。名古屋市や大阪市、西宮市、尼崎市などで所長として手腕を振るうかたわら、シールド工事専門委員会の大阪支店委員長を兼任。現在、自身が受け継いできた知恵や技術を次の世代に伝承するために、若手の育成に尽力している。
1級土木施工管理技士。

プレッシャーや不安が大きな達成感へと変わる瞬間。

現在、兵庫県の尼崎市で下水道工事の所長として、施工管理はもとより、工事予算や原価管理、安全衛生管理などさまざまな業務に携わっています。約30年に及ぶキャリアの中で、長年手がけてきたのがシールド工事。シールド工事とは、トンネルや下水道などを建設する際に、大きいもので直径が14メートルほどもあるマシンを使って、地中を掘り進めていく工事のことです。専門性の高い工法なので、会社には、ベテランの社員で構成された専門委員会が組織され、私は大阪支店委員長を務めています。委員長の仕事としては、入札時の見積もりや技術提案、営業支援などを兼任。ありがたいことに今でこそシールド工事のキーパーソンとして信頼を得ていますが、現場の責任者として仕事ができるようになるには、一朝一夕というわけにはいきません。若手の頃から、土の質やマシンの特性について勉強し、場数を踏むことで少しずつ現場に慣れていきます。プレッシャーと戦うこともシールド工事ならでは。地下何十メートルという地中を掘り進めていくわけですから、当然、正確に掘り進められているか不安を感じます。私も若手時代は毎日、プレッシャーに押しつぶされそうになりながら現場に向かっていました。しかし、その分、この上ない達成感を得られる工事でもあって、マシンが到達地点に達した瞬間には、感極まって涙を流す人もいるほどです。全長1900メートルという大規模な工事が竣工したときには、ベテランと呼ばれるようになった今でも、胸に来るものがありました。


地球相手に仕事をすること。壮大な世界に魅了され続けてきた。

祖父と叔父が大工をしていた影響もあって、建設業界に進んだのは自然な流れでした。建築にも興味があったので、土木と建築、どちらにしようか迷ったこともありましたが、高校生だった当時の自分にとって、土木は大雑把で、建築は繊細というイメージがあったんです(笑)。
実際、土木が大雑把かというとそうではありませんが、細かい計算が苦手な自分にとっては、土木の方が向いていると思いこの道を選びました。橋や道路、ダム、トンネル、空港の建設など、地球相手にダイナミックな仕事ができるところにも魅力を感じていましたね。大きなものをつくり、人々の暮らしに不可欠なライフラインを支える土木の道に進んで、気づけば約30年。今でもこの壮大なものづくりの世界に魅了されつづけています。


強い使命感を胸に挑んだ阪神淡路大震災の復旧工事。

これまで携わってきた工事の中で、最も印象に残っているのが、阪神淡路大震災の復旧工事です。地震発生から4日後に、大阪湾から船で神戸に向かいました。被災地に到着すると、たくさんの建物が倒壊し、あちこちで黒煙が吹き上がっていて、目を疑うような光景がひろがっていました。しかし、とにかく一刻を争う事態でしたので、怖気づいているひまもなく現場に。被災地にいたのは、1月下旬から3月上旬ごろまででしょうか、泊まり込みでの仕事となりました。昼夜を徹して工事を進め、作業終了後は、すし詰め状態の宿舎の中で、寝床を探す毎日。電気もガスも通っていないので、当然お風呂には入れませんし、寒さは作業用のライトを体に当ててしのいでいました。このように過酷な状況下でしたから、肉体的にも精神的にも極限まで追い込まれましたが、「俺たちがやらなきゃダメだ」という強い使命感で、工事に挑んでいました。今、震災から復興し栄えている神戸の姿を見ると、自分も少しはこの街に役立てたかな、と誇らしく思いますね。被災した方々のことを思うと心が痛むばかりですが、助けを求める人々や地域と復興への歩みをともにし、貢献できることも、この業界で仕事をするやりがいのひとつではないでしょうか。


ものづくりの感動や達成感を次の世代に伝えていきたい。

バブル崩壊後、一度は冬の時代が訪れた建設業界でしたが、公共事業の拡大や東日本大震災の復興事業、東京オリンピックの開催決定に伴い、今後ますます求められる業界となります。この追い風が吹く中、私たちが取り組んでいくべきことは、若手の育成。交通やガス、水、電気など人々のライフラインを支えるこの業界にとって、次世代の担い手を育てあげることは、現在建設業に携わっている我々の使命であり、国家が問題意識を持って取り組むべき事業です。建設工事は机上の計算だけでは成り立ちません。私たちが若手の頃、先輩方やベテランの職人さんから教わったように、今度は私たちが脈々と受け継いできた知恵や技術を、次の世代に伝承していきたいと思っています。この仕事は突発的な計画の変更や自然災害の発生など一筋縄ではいきません。しかし、人々の暮らしを支え、安心や感動をもたらすやりがいがあります。大きなものをつくる達成感があります。これからこの業界に飛び込もうという若い人には、私たちが日々感じている喜びや感動をぜひ、ともにしてほしいと思いますね。

Bonus Talk

修成で学んでいた頃はどのような学生でしたか?

恥ずかしいことですが、真面目な学生ではなかったので、修成には3年間お世話になりました(笑)。進級できなかったときは、挫折しかかりましたが、修成で出会った仲間たちが支えてくれたので土木の道を諦めずにいられました。彼らとは卒業から約 30年が経った今でも、同じ道に進んだ者同士お酒を酌み交わす仲で、私のかけがえのない宝物です。

学生時代にすべきことは何だとお考えですか?

とにかく一つひとつの授業に真剣に取り組むことです。就職すると、上司や先輩から基礎的なことは当然知っているものだと判断されて、聞くことをためらってしまいます。私の場合は、社会に出てから毎日こっそり勉強してなんとかやっていました。学校で学んだ知識や技術は就職後にきっと役に立ちますし、自分の可能性をひろげる財産になるはずです。

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