土木業界で発揮するドボジョの力。
喜安:どんなときにやりがいを感じますか?
正木:「きれいになった」って思う瞬間がうれしい。何年か前に冬の夜勤で、できたての道路に寝転がったことがあるよ。朝方冷え込む時間帯だったので、温かかったなぁ。もちろん、まだ開通していないところでね。
橋本:道路ってできたては温かいんですね。
正木:アスファルト混合物は最初165℃くらいあるからね。基本的に50℃以下にならないと車は通せないんです。運転席はエンジンの上なので、夏はエンジンと材料と、太陽の熱気で暑い。じゃあ冬は暖かいかというと、運転席は上の方にあるので風が通って寒い。でも自然相手の仕事だから、暑い寒いは当たり前です。怒られることもありますが、そういう世界だと納得してやっているので、困るとか、いやだという感情はないですね。
喜安:そういう環境で働き続けるのに必要なことはありますか?
正木:「女性だから〇〇が必要」というのはないと思います。女性に限らず、この業界で必要なのはやる気と気合いですよ。あるとき道路を少し割るために重機ではなく大きなハンマーを使ったのですが「(ハンマーが重いから)振り回されとる。こんなこともできんのか」と言われたんです。「こんなやつに負けてたまるか」と思いましたね(笑)。そういう日々の「負けたくない」という積み重ねが力になっている気がします。
橋本:その負けん気の強さが大事なんですね。
喜安:やっぱり、やる気と気合いなんだ!
正木:ただ、仕事のスピードで工事全体の進み具合が変わるし、それで入ってくるお金が変わることもあるシビアな世界です。『ドボジョ!』でセメントを持っているシーンがありましたよね。これ本当に重いんですよ。でも女性が2つ運ぶ間に男性は4つ運べる。体力的な差は絶対にあるので、そういう仕事は今後も女性には難しいかもしれない。私もいまだに歯がゆい思いをすることがあります。
喜安:そうなんですか。その体力の差をわかったうえで女性が活躍できるとしたら…。
正木:機械には乗れるよね。例えば私が乗っているフィニッシャーはすごいスピードが出るものでもないし、他にも仕上げに乗るような機械なら女性の細やかさを生かせるかもしれない。あと、細かなチェックが必要な発注者側の監督には女性も増えています。現場で働いていて、やっぱり配慮や気配りは女性の方ができると感じます。女性には女性のできることがあると思うので、自分ができることを見つけるのが大事じゃないかな。
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- 株式会社正木商店
- 土木工学科 2003年 卒業
関西の女性では珍しい、アスファルトフィニッシャーに乗る重機オペレーター。現場で鍛えられた負けん気の強さで10年のキャリアを積み、3人の子育てをしながら道路舗装の現場で活躍中。