Creator's File 大喜建設株式会社 工事部 部長 中塩屋 雅之の仕事

大喜建設株式会社 工事部 部長 中塩屋 雅之 Masayuki Nakashioya

1982年土木工学科卒業後、大喜建設株式会社に入社。
これまで武庫川昆陽井堰や武庫川下流流域下水処理場、阪神・淡路大震災復旧工事など多数の土木工事に携わる。中でも国道175号神出バイパス工事では国土交通省による工事成績評定で82点の高得点を獲得。

道路、河川、上下水道…自然を相手にする醍醐味。

兵庫県西宮市を拠点に土木・建築工事を行っている会社の土木部門で工事部の部長をしており、現在は監理技術者として西宮市のバイパス設置工事現場に携わっています。この道路は地元の方々が安全性を高めてほしいと約20年にもわたって要望されてきたもので、開通すれば安全性の向上はもちろん交通混雑の解消も期待されている現場です。これまで道路、河川、上下水道などさまざまな土木工事に関わってきました。中でも印象に残っているのは、兵庫県を流れる武庫川で、農業用水分配のためのゲートをつけた工事です。工事期間中に阪神・淡路大震災が起き、電気が止まったことで現場内の水替えができず、組み立てた鉄筋、型枠が水没に。道路が復旧しなければ工事を始められないため、工期が1か月半も止まりました。再開後は、組んでいた部材を取りはずし、土砂をすべて洗い流して組み直し。資材も不足がちになったうえに、河川内工事は6月以降の雨期が始まるまでに工事を終わらせる必要があるため、急ピッチの作業で完成にこぎつけたときは安堵の気持ちでした。 現場でどれくらい工夫ができるかが腕の見せどころ。

コミュニケーションを欠かさず、現場での工夫に生かす。

仕事をするうえで心がけているのは、現場での工夫です。2012年に担当した兵庫県明石市と京都府福知山市を結ぶバイパス工事の際は、近隣の田畑にできるだけ影響が出ないようにして、発注者である国土交通省近畿地方整備局兵庫国道事務所から事務所長表彰を受けました。周囲に田畑が広がる用地に盛り土をして道路をつくるのですが、盛り土が雨で崩れて流出しないよう雨水をためる専用の池をつくり、土砂を沈めてから上澄みの水を排水する仕組みをつくりました。また、周囲の果樹園で育てている桃に粉じんがかぶらないよう、散水車からの水まきと防じん用シートを設置しました。桃は出荷前に洗うことができないため、粉じんがかぶると商品価値が下がってしまうのです。これらの工夫にはコストがかかりますが、できる範囲内でどう対応するか。そのためには発注者である顧客と、近隣住民とのコミュニケーションを欠かさず、何を求められているのかを常に把握しておくことが大切ですね。そして、先を読むこと、確認すること。ミスやロスを出さないために、目の前にあることだけではなく、これが次にどうなるのか、その次はどうするのかということをよく考えることが大事です。 自分のつくったものが、残り、役に立つ大きな喜び。

多くの人に日本の土木技術の素晴らしさを知ってもらいたい。

土木の奥深いところは、建築のように縦方向中心に作業をするのではなくて、横方向への作業を進めていくところだと思います。大きな現場は事前のボーリング調査などで地中の状態を把握していますが、実際に掘ってみて水が湧くところもあります。震災も含め、とにかく自然に左右される仕事で、そこが厳しさでもありますし、工夫のしがいがあるところでもあります。また、工事区間が数十メートル進めば住民の方も変わるので、コミュニケーションは特に大切にしています。どのような工事をしているのか興味をもっていただき、歩ける状態まで工事が進めば一足先に見学会などで通ってもらいます。たとえば地下に集中豪雨対策の貯留槽をつくったときには、修成の学生や近隣の小学生、先生などを招待し、地下に潜って貯留槽内を歩いてもらいました。「一生に一度あるかどうか」と喜ばれ、日本の土木技術の高さを感じていただけたと思います。最近では行政も近隣の住民の方々へのアピールに力を入れていますので、多くの人に土木への興味をもっていただける機会をつくれるように工夫したいですね。こうして、つくったものが残り、社会の役に立てることが土木のやりがいだと思います。一つひとつのことをよく考えて作業したかどうかで自分がつくったんだという実感が強くなり、土木の醍醐味をより感じられると思います。特に今は、自分でつくったものがgoogle earthで見られるのがいいですね(笑)。 自分で考えて創意工夫を重ねれば、完成の達成感も大きい。

これからの土木業界を担う人材育成が私の大切な仕事。

私は工業高校で土木に出合い、もともとものづくりが好きだったこともあって修成に入学しました。中学や高校までは多くの場合、限られた地区内での友人関係になりますが、修成で他府県出身の友人ができたことがよかったです。育った環境が違うため、発想も感性も違う。そこから視野を広げられたことが今でも自分の財産になっています。今では社内にも修成の後輩がいますし、現場で他社の人に会うと修成の卒業生だったいうこともあります。そうやってさまざまな人と関わり、協力会社さんや職人さんと一緒にものづくりができるのは本当に楽しいですよ。この現場でも、多い時には30人もの職人さんに入ってもらいますが、現在の土木業界は施工管理も職人の数も足りず、人数の確保に苦労しています。日本全国で上下水道や道路、橋などの老朽化に対応し、人々の安心で安全な生活を維持していかなければいけない時期がきていますので、若い人たちが日本の土木技術を受け継ぎ、活躍してほしいですね。そういった人材を育てていくのが、これからの私の大切な仕事だと考えています。

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