学生たちの受賞作品
作品画像を見る
作品画像を見る
AGRI-PARK【西濱賞(教育顧問賞)/ 建築・デザイン賞 / SDGs賞】
STEVEN MARCELLINO 建築学科
【学生コメント】
「農に育てられた記憶」が私の原点です。農家の減少により、かつて当たり前にあった里山の風景が消えていく現状に強い危機感を抱きました。そこで本計画では、食の歴史深い天満・扇町公園を舞台に、都市と農を再び繋ぐ「アグリ・ゲートウェイ」を提案します。
最も苦労したのは、公園の主要な動線である「学道」と、生産の場である「農園」をいかに共存させるかという点です。建物のボリュームを大胆に削り出し、人流を内部へ引き込むことで、日常の中で誰もが「農」を視認し、偶然の学びを得られる多孔質な建築を実現しました。伝統的な土耕と最新の水耕栽培を融合させたこの場から、次世代の担い手が育つことを切に願っています。
【指導教員<邊見 栄俊>コメント】
彼は毎週のゼミで必ず一つ提案をもってくる。ほかの学生なんか関係ない、毎週、毎週、別の提案を持ってくる。テーマは変わらず、農業の都市化だ。「そもそもなぜ、農業を都市でやらなければいけないのか?」「なぜ扇町公園なのか」「扇町公園らしさとは?」「水耕栽培よりもやっぱり土を使う栽培のほうがよいのでは?」「水耕栽培の水はどこから使うの?」「都市型農園の最大のメリットは?」など様々な質問や問いを毎週のように投げかけたが、そんなことはつゆ知らず、スケッチを描き、CGを描く。何度も良く考えろと諭したが、つゆ知らず、スケッチを描き、CGを描く。それが彼の卒業設計である。これからも彼はスケッチを描き、CGを描くのだろう
Memento Mori【倉方賞(教育顧問賞)/ 建築・デザイン賞 / JIA近畿支部賞】
ZARNI PHYO WAI 建築学科


【学生コメント】
記憶の昇華と再生の空間ー 本プロジェクトは、軍事独裁下のミャンマーでの実体験を背景に、「死の観想(メメント・モリ)」と「社会の再生」を建築へと昇華させた物語である。 全3部は、順序を限定しない非線形な構成をとる。Part 1では13mの壁が作る「狭い空」と空間の圧縮により、死を直視し生の価値を問う。Part 2では地下の闇からスキップフロアを伝い、記憶が空中に浮遊(Floating)して光へと昇るプロセスを体現した。Part 3では、伝統的な仮設建築「マナッ」を再解釈した大屋根の下、対話と読書を通じた日常の治癒とコミュニティの再構築を図る。 既存の15m級の樹木と「共生するダンス」を踊るように配置されたこの建築は、痛みを忘却するのではなく、それを未来への教訓へと変えるための「静かなる革命」の装置である。
【指導教員<田中 おと吉>コメント】
大変な状況にある母国の「状況」を抽出して展示する建物を軸に計画を進めていった。ある程度全体像が見えてきた頃から彼の思いが強まり、それが彼の手を止めさせた。自分一人が日本の平和な環境でこんな自己満足な計画を進めていていいのだろうか、という感情が高まったのだ。日本に住んでいる立場だからこそできる情報発信が必要であるとアドバイスした。そこからは順調に進んでいった。鎮魂のモニュメントの意味を含めた「死を想い、生を謳歌する」ための場所である。
出来島地域図書館【基本設計コース賞】
李 汪洋 建築学科

【学生コメント】
これまでは意匠やアイデアを重視した課題に取り組んできましたが、卒業設計では「製図」という建築の本質に向き合うため、「基本コース」に挑戦しました。正確な図面を描き切ることが、将来建築士として歩むための土台になると考えたからです。今回設計した「出来島地域図書館」で大切にしたのは、**「地域の居間」**としての役割です。特にこだわったのは、3階の展示エリアや屋根上広場によるコミュニティ機能の強化と、1楼における子供たちの安全な居場所づくりです。どこにいても大人の目が届く安心感と、中庭を介して生まれる静かな読書環境の両立を目指しました。また、デザインの背景には、私自身がよく訪れる「金沢市立玉川図書館」への憧れがあります。あの静謐な空気感と、光が差し込む閲覧席の心地よさを再現すべく、ゾーニングと遮音には細心の注意を払いました。この作品は、私の2年間の学びの総括であり、理想の図書館の形です。
【指導教員<小林 亮介>コメント】
来日後良く通ったという、谷口吉郎・吉生の金沢市立玉川図書館での原体験を手掛かりに計画を進めている。敷地は駅から近く、高速の高架沿いにあり、街区公園とはいえ周りは中層の建物で囲まれている。このような条件下で【中庭】をテーマとして選んだ時点で、建築的嗅覚に優れていると言える。玉川図書館の中庭の心地よさに感動したことからの発想ではあるが、敷地環境に上手く着地させている。既存遊歩道と大通りをつなぐ東西への通り抜け動線や北側に管理部門をまとめることにより、居心地の良い場所を図書空間に開放している。プランニングは初期の大胆な構想に比べると、均一に整えられ、納められたという感が否めないが、それができてしまうところに、李さんの上手くもあり、少し俯瞰して物事を見定める態度の表れでもあるように感じられる。
音集め【意匠設計コース賞】
荒木 拓人 建築学科

【学生コメント】
年々発展を続ける明石において、桜堀にも開発の手が及ぶことで、かつて武士たちが明石城を守ろうとした想いや、この場所が内包してきた歴史的記憶が失われてしまう可能性を感じていました。
設計を進める中で、ここでは何もしないことこそが正解であるにもかかわらず、自らが開発を進めることで、歴史的に価値のある場所を陳腐なものへと変えてしまうのではないかという葛藤から、設計に行き詰まった時期もあった。
そこで本計画では、桜堀とその環境には極力手を加えずに残しながら、場所の価値を変えるのではなく、人々の認識を変えることで記憶を継承することを目的とし、ここの魅力や価値を強く感じ取れる「増幅装置」としての構造物を提案しています。
【指導教員<成願 大志>コメント】
明石公園は、江戸時代に築かれた櫓や城壁が残る史跡であるが、駅や市の中心地にも近く、戦後は悪く言えばやや場当たり的に市民のための運動施設、文化施設をいくつも付け足してできた城址公園である。荒木くんはその公園の方向性の模索に大いに悩んだ。悩みながらも、公園の図書館跡活用の市民ワークショップに参加し、日々の観察を繰り返す中から、城壁と堀跡が時間とともに雑木林となった窪地に可能性を見つけてきた。雑木林といえば聞こえはいいが、やや荒廃した雰囲気もそこにはあった。そこでこの提案は、“自然の音を聞く”ための彫刻的なメガホンのような装置を複数配置し“静かにその場所の音を聞く“という提案である。音を手がかりにその場所に静かに向き合うことで、城趾の経てきた時間に対しても真摯に向き合うというランドスケープの提案となった。
遊屋保育園【企画設計コース賞】
NANDAR LYNN 建築学科

【学生コメント】
本設計が目指したのは、子供たちを既存の評価や数字の枠に閉じ込めるのではなく、自らの足で歩み、無限の可能性を切り拓いていくための『土壌』を築くことです。デザインの核である『無限』のループは、単なる造形美に留まりません。それは、地上から屋上へと境界なく繋がる動線を通じて、子供たちの好奇心が途切れることなく循環し、常に新しい視点から世界を眺めるための装置です。建築が地形の一部となり、遊びがそのまま学びへと変わる。この場所で育まれるのは、変化し続ける社会において自ら問いを立て、答えを探求し続ける力です。この学校が、子供たちの未来を規定する場所ではなく、彼らの可能性を無限に押し広げるための揺るぎない原風景となることを切に願っています。
【指導教員<角野 峰生>コメント】
情熱を持って最後までやり遂げた成果が、この「遊屋保育園」に凝縮されていますね。「無限」をテーマにしたループ構造は、単なる造形美を超え、子供たちの成長を育む豊かな「土壌」として見事に昇華されています。地上から屋上へシームレスに繋がる動線設計からは、遊びを学びへと変える建築の力を強く感じました。社会の枠に捉われない教育の場を、地形の一部として表現しきった粘り強さは、あなたの大きな強みです。この建築に込めた想いを、ぜひ今後の糧にしてください。
Inside the Spiral【企画設計コース賞】
城 瑞木 建築学科

【学生コメント】
"Inside the Spiral"螺旋の内側という意味でつけました。私が作品にしたのは、未来の美術館です。この美術館は、建物に入ると1番に塔のような物体があり、その物体の中に螺旋エスカレーターが現れます。「ただ歩いて作品を鑑賞する」という当たり前を壊し、「螺旋エスカレーターに乗りながら作品を鑑賞する」ものを、想像だけで描きました。この螺旋エスカレーターは車椅子でも乗れるものになっているので、幅広い人達が楽しめるようになっています。螺旋エスカレーターな理由は、思いつきです。ただ、考えていくうちに車椅子の方も利用出来るメリットや、1番は「全員が同じ時の流れを感じれる空間づくりが出来る」などそのような点も出てきました。「未来の美術館」がテーマなので、「構造的に無理」など現実的な点からは目を逸らして頂けると嬉しいです。色々想像しながらご覧ください。
【指導教員<角野 峰生>コメント】
あえて図面やCG、模型といった手法に頼らず、「鉛筆ドローイング一本」で自らの世界観を伝えきろうとしたその挑戦に、表現者としての強い覚悟を感じました。螺旋エスカレーターで「全員が同じ時の流れを共有する」という哲学的な着想も、手描きの柔らかな筆致(タッチ)だからこそ、見る者の想像力をかき立てる詩的な空間として昇華されています。構造を超えた先にある純粋な「体験」を追求するその感性を、これからも大切に磨き続けてください。
つながる保育園【木造コース賞】
上原 彩花 建築学科
【学生コメント】
子どもたちが自然に触れ、子どもたちがのびのびと過ごせる保育園です。木造の温かみを感じ、季節の変化、天気の変化を感じれるような保育園を考えました。私が選択したコースは木造コースなので、木造の建物で何か面白い形の建物を考えたいと思い、浮かんできたのがハニカム構造で、その形で保育園を考えてみることにしました。軸組模型、図面を考える際一般的な長方形の建物ではないので大引きや根太の配置、小屋束や母屋をどのように置けば自分の思うような建物の形状になるのかが難しかったです。模型を作る際合わさる部分を90度の断面ではなく先をとがらせたり上手く組み合わせるように部材を切り、接着しました。部屋ごとの屋根の高低差を上手く表現できて良かったなと思います。
【指導教員<井上 嘉亮>コメント】
彼女は、当初から掲げていた「造形美の追求」が、単なる装飾に留まらず、構造と空間が一体となった有機的な建築として見事に結実しました。特筆すべきは、ハニカム構造の特性を平面のみならず「高さの多様性」へと展開した点です。3つの異なる高さの建物群を集約させることで、六角形の連なりに立体的でダイナミックなリズムが生まれた。この高低差が、ハニカム構造の幾何学的な美しさをより一層際立たせている。また、模型製作においても、その複雑な構造を妥協なく再現しようとする丁寧な作業が彼女らしいところだ。この「構造への誠実さ」こそが、建築に説得力を与えている。
日本庭園が楽しめる旅館【木造コース賞】
鳥羽 優那 建築学科

【学生コメント】
兵庫県の城之崎温泉街の周辺の山に位置する旅館です。建物の中心にある日本庭園が特徴で、どの客室からも見えるようになっています。1階では、庭園を楽しむためのスペースもつくりました。
【指導教員<増田 和浩>コメント】
城之崎という歴史ある街並みを背景に、山際に建つ木造2階建ての温泉旅館にチャレンジしてくれました。中庭の日本庭園を視線の中心に配置し、1階はロビー、廊下、2階は全客室から日本庭園の情緒を楽しむことができる設計です。木造コースとしては大規模なものとなりました。また、構造図を細かく書き、時間をかけて軸組み模型を完成させました。意匠と構造を丁寧に交差させたと思っています。
芝設計事務所【構造コース賞】
芝 将太 建築学科
【学生コメント】
卒業設計での2階建てRC造の構造設計を通じて、私は構造計算の順序や計算方法を1から学び、構造設計の重要性を深く理解できました。特に、鉄筋の役割についての理解が大きく変わりました。これまでは、鉄筋がどのような役割かなんとなくしかわかっていなかったのですが、卒業設計を通じて、どの鉄筋がどのような役割で、力がどのように作用するのかを具体的にイメージできるようになりました。さらに、設計の過程で使用するAutoCADやExcelなどのソフトで、図面作成や計算を効率的に行う技術を身につけました。特にExcelでは、関数を使ってデータを整理・分析する方法を習得し、設計に必要な計算を自動化できるようになりました。この構造設計で意匠設計ではわからなかったことがわかり、これからの仕事に活かしていけると思います。
【指導教員<荒木 伸輔>コメント】
今年度の構造設計は、「解析力」に優れ、「設計力」のある力作となりました。流れ:「基本設計」→「構造図」→「構造計算書」→「架構配筋図」。それぞれのパートが見事にリンクして、流れるような設計となりました。すべての「通り芯」における「架構配筋図」は、「施工管理」に受け継がれ、「構造体」として「形」となることでしょう。
BAGAN VIEW PARK【建築・デザイン賞】
PAW PYAE 建築デジタルデザイン学科

【学生コメント】
ミャンマー・バガンの歴史と自然に向き合いながら、「眺める・休む・交わる」をテーマに計画した眺望拠点です。観光で訪れる人が朝日や夕日を楽しみながら過ごせる場所であると同時に、地域の人々が日常的に集い、交流できる場になることを目指しました。設計にあたっては、周囲の遺跡や地形、視線の抜け方を意識し、建築が風景の一部としてなじむよう配置や高さを工夫しています。卒業設計を通して、敷地を読み取り、建築で関係性をつくることの大切さを学びました。この経験を今後の設計にも生かしていきたいと考えています。
【指導教員<鈴木 佑輔>コメント】
ミャンマー中部バガンにおける眺望拠点の設計。敷地周辺は経済面においても観光業の重要性が高く、歴史的価値の高い遺跡群の付近でありながらも、遺跡群への敬意だけでは汲みきれない複雑な要件を抱えています。またそれらは作者本人が最も強く感じていたと思います。それらの複雑な要件に対して、自然、仏塔への敬意を基盤に、朝日と仏塔、夕陽とエーヤワディー川という新たな価値観を加えながら建築として形作っています。周囲の景観への配慮や観光客のニーズにも配慮されており、最後まで粘り強く設計し続けたバランス感覚が建築に現れていると思います。
緑の図書館【基本設計コース賞】
豊島 琴音 建築デジタルデザイン学科

【学生コメント】
私は緑豊かな公園の中に建つ図書館を設計しました。
甲子園球場5個分の広さを持つ安満遺跡公園は、弥生時代の遺跡やカフェ、トランポリンなどがあり、晴れの日はたくさんの人で賑わっている一方、雨の日は屋根が少ないため利用する人が減る現状に着目しました。公園の中に建つ立地を生かし、自然を感じながら読書ができるように、カーテンウォールを設けたり、閲覧室に芝生コーナーを作ったりしました。雨でも訪れたくなる場所とするため、水盤や雨で香りが立つ植物を配置し、雨を魅力として取り込む工夫をしました。公園の中に図書館を建てることで天候に左右されず、地域の人が集まる場所をつくることを目指しました。
【指導教員<中川 慶一郎>コメント】
地域の人々が利用する公園。しかし、天候によって利用状況が左右されてしまうといった課題がある中で、大屋根を用いた「半屋外な空間」を取り入れた作品。建物内のゾーニングも明確にされており、屋外についても雨を生かした水盤というのも面白い計画となっていた。建物内は細かい部分まで表現は出来たが、大屋根のデザインについては屋根版を大断面の柱で支えるといったシンプルなものであったので、細部についてデザインが行き届かなったことが惜しいと感じた。円方集落のテーマを細部のデザインに取り入れることができれば、さらに良いものになったと思われる。卒業制作を通じて、建築の楽しさや難しさを感じながらもその学びを生かし、これからの建築の世界での成長を期待したい。
THE TIMELESS FAULT MINGUN Earthquake & Science Museum【デジタルデザインコース賞】
SU SU NAING 建築デジタルデザイン学科

【学生コメント】
本プロジェクトは、地震によって被害を受けたミャンマー・ミィングンを敷地として、失われた「過去の美しさ」を記録し、それを「未来の安全と希望」へとつなぐことを目的に計画しました 。震災の悲しみを単なる記憶で終わらせるのではなく、防災への学びへと昇華させ、人々が再び安心して訪れ、集える場所をつくりたいと考えています。建築は、歴史や記憶を優しく包み込む「柔らかい部分」と、地震の脅威に向き合い、科学的に学ぶ「硬い部分」で構成し、その対比を空間に表現しました 。来館者は、過去の記憶に触れ、災害の現実を体感し、防災学習やワークショップへと至る動線を通して、知識と行動へとつなげていきます。このミュージアムが、文化を守り、命を守り、地域の未来を静かに支える存在となることを目指します。
【指導教員<鈴木 佑輔>コメント】
ミャンマーザガイン管区ミングンにおける防災・地域拠点としての展示館の設計。初めて案を聞いた時からブレない芯の強さは、作者自身へのこの場所への思い入れを強く感じさせました。地震によって崩れてしまったミャテインタンパゴダの記憶の継承、地震への注意喚起及び耐震性を含めた機能、地域コミュニティ施設としての役割など、複雑な諸条件に対して、柔らかさと硬さと言う相反するものを一体にすることで明快に形へと紐解いています。単なる郷愁や情緒で完
結するのではなく、悩みながらも具体に形、そして建築へと昇華するスピードを日々高めていった姿は頼もしく思えました。
Immersive Art Experience -Museum of Art and Light-
DANG DINH KHANG 建築デジタルデザイン学科
【学生コメント】
本設計の核となるのは、「動」と「静」という対照的な概念の調和による、新たなアート空間の創出である。ここで「動」は光を、「静」は建築を象徴する。
建築における光は、単なる照明ではなく、空間を定義し変容させる「動的な素材」として機能する。日中は、移ろう自然光が刻々と角度を変え、時間そのものを構造体に刻印するように深い影を落とす。そのとき、堅牢な壁面はあたかも溶けゆく物質のような表情を見せる。一方、展示空間では3Dプロジェクションマッピングが空間を劇的に変容させる。無機質な壁面はデジタルアートのキャンバスへと化し、静止していた建築は拍動を始める。これら相反する要素の交差地点において、来場者は物理的な境界を超え、建築が呼吸し、変容し続ける新たな地平を目撃することになるだろう。
【指導教員<辰井 菜緒>コメント】
「光が主役となり、建築が姿を変え続ける」という発想はとても刺激的で、これまでの美術館のあり方を問い直す素晴らしい着眼点でした。2階の可動壁や3Dマッピングを用いた空間作りには、描きたい「新しい建築像」の片鱗がしっかりと現れています。
ただ、コンセプトが非常に壮大で魅力的だった分、そのポテンシャルを実際の設計案として細部まで形にしきれなかった点は、心残りでやりきれなさを感じています。
しかし、この挑戦で得た「空間を動的に捉える視点」は、これからの建築に不可欠な力です。今回の試行錯誤を大切に、デジタルと建築が溶け合う未来の風景を形にしていけるよう、さらなる飛躍を期待しています。
サブカルチャーがつなぐ高校生の未来【学校長 / 内倉賞(教育顧問賞)/ 建築・デザイン賞】
阿部 和奏 空間デザイン学科


【学生コメント】
私の卒業設計は、地元愛媛県今治市にある旧商業施設「ヴィサージュ」をリノベーションし、高校生の居場所として再生する計画です。地元を活性化させたいという思いから始まりましたが、計画を進める中で、高校時代に自身が感じていた孤独や居場所のなさを解消したいという原点に立ち返るテーマへと発展しました。「17歳のときに聴いた音楽が人生で最も深い意味を感じる」という論文をきっかけに、私自身が支えられてきた音楽をはじめとするサブカルチャーに着目し、感情や記憶に寄り添う空間を建築で表現することを目指しました。制作には大きな建物を扱う難しさもありましたが、岡﨑潤先生の真摯なご指導のもと、最後までやり遂げることができました。卒業後は専科二級建築士科へ進学します。将来は地元に戻り、建築を通して地域に貢献したいと考えています。
【指導教員<岡﨑 潤>コメント】
『17歳のときに聴いた音楽が人生で最も深い意味を感じる』
これはフィンランドのユヴァスキュラ大学の研究報告だが、阿部はこれに自身を重ね、音楽の「曲・詩・ヴィジュアル」に込められたメッセージに救われてきた経験を振り返る。
高校生が自らの興味や在り方を模索し、何かに没頭し、誰かにメッセージを送ること、そして同じように送られた誰かのメッセージに触れること。また、それをしてもしなくても良い「ただ在ることを認められる」時間と空間があること……阿部はその重要性を繊細に理解し、親しむ音楽の力を基に人の居方をヒューマンスケールで想像しながら「高校生の居場所と将来戻って来れる場」を紡いでいる。それを許容する器にサブカルチャーと呼ばれる文化とバブル期の遺構を選び、今治の諸事情を編み込んでいる点も興味深い。
CIRCULATION — 知と食が巡る図書館 ―【SDGs賞】
河田 彩音 空間デザイン学科


【学生コメント】
本計画では、「知ること」と「生きること=食」を結びつけた図書館を設計しました。従来の図書館が、本を読んだり勉強をしたりして知識を得る場であるのに対し、本計画では、実際に体を動かし、体験を通して学ぶことができる場を目指しました。館内には、食やものづくりに関わる体験の場を設け、学びが日常の行為と自然につながる構成としました。また、SDGsへの取り組みに力を入れ、環境への配慮や、多様な世代や立場の人々が安心して利用できる空間づくりを意識しました。知識が本の中にとどまらず、暮らしの中で循環していくような図書館になったと思います。
【指導教員<鍵谷 啓太>コメント】
今年度の空間基本設計コースは「ものづくり工房を併設する地域図書館」をテーマとした設計を行なった。河田さんは毎回のゼミでしっかりと試行を見せてくれ、指導する私もとても楽しい時間でした。環境負荷を抑えたニュートラルな建築は一見、無機質なようにも感じられますが、「この場所に必要なものはなにか?」から生まれた、「開かれた学習基盤=図書館」という思考の帰結がきちんと建築に昇華された、優しい工夫に満ちています(ヤギもいるしね)。ひとつひとつの基本を大切にあつかい、そのクオリティを高めようとする、河田さんらしい質の高い設計になっていると感じました。
100年後の人々へ贈る「生駒山上都市」【空間ディプロマコース賞】
柿木 彩奈 空間デザイン学科
【学生コメント】
私の卒業設計は、生駒山上遊園地が持つ「人々の記憶と歴史の重なり」に魅了されたことがきっかけでした。かつて建築家ブルーノ・タウトが夢見た「生駒山小都市計画」という未完の構想を現代に再起動させ、単なる遊園地の再生ではない、100年先へと続く循環型の山頂都市を提案します。設計においては、既存の遊具を「記憶の装置」として保存・転用し、地形に溶け込む宿泊機能を組み込むことで、都市の喧騒から切り離された精神的な充足の場を目指しました。歴史を遡り、その場所が刻んできた物語を読み解くことで、未来の風景を創造することに挑戦した作品です。この提案が、訪れる人が歴史に触れ、この場所を次世代へ残したいと願うきっかけになれば幸いです。
【指導教員<大河 千春>コメント】
柿木さんは入学当初より、自らの心奥に広がる抽象的なイメージを言語へと再構成し、論理的な建築・デザインへと落とし込む資質を備えていました。その積み上げが今作において発揮されたと感じました。本作の起点となったのは、彼女の原風景とも言える生駒山上遊園地での幼少期の記憶でした。時の奔流に洗われ、色彩を失いつつあるその場を、単なる「遊園地」から、精神を解き放つ「憩いの地」へと転生させる試み、その中で特筆すべきは、遊具の外殻を「過去の遺構」として保存し、その虚ろなフレームの中に新たな安らぎを見出すという、時間の重層性を肯定する姿勢でした。指導の傍ら、私はその計画が紡ぐ「100年の歩み」に、感服しました。この「時代への順応」というメソッドは、単なる一施設の再生に留まらず、日本各地で静かに朽ちゆく地方遊園地に対し、「延命」ではなく「進化」としての解を提示する、一つのパラダイムシフトとなり得るのではないでしょうか。彼女がこの卒業設計を通じて、物事に真摯に向き合う姿勢や、周囲への感謝を忘れない謙虚で素直な心を育んだことは間違いありません。その姿勢が、これから出会う多くの人々に信頼され、自らの道を力強く邁進していかれることを心から願っています。
湯につかる【インテリアコース賞】
原田 優良 空間デザイン学科
【学生コメント】
この作品は私自身の幼少期の記憶と、恵山という土地が持つ時間の積み重なりを重ね合わせました。実家が温泉旅館であったことから、温泉は日常の中にあり、湯につかることは特別な行為ではなく、心と体を整える当たり前の時間でした。恵山の山並みや立ち上る湯気、建物の匂いや音は、今も鮮明に心に残っています。本計画では、当時の玄関や食堂、カウンターなど、懐かしい空間のかたちをできる限り残しながら、静かに安らぐ宿泊体験ができる小さな宿を目指しました。活火山である恵山が生み出す温泉と、大きな空を感じながら湯につかる時間は、天候や季節の移ろいをそのまま受け入れる体験となります。過去の記憶をただ保存するのではなくこれから訪れる人々の記憶として積み重なっていく場所になることを願っています。
【指導教員<眞野 サトル>コメント】
祖父が営んだ恵山の小さな温泉旅館の再生計画。自身のルーツという切実な場所に、真正面から向き合った作品です。特徴は、CG全盛の時代にあえて手書きパースで表現した点です。その一枚一枚から滲み出る「手のぬくもり」は、古びた建物が持つ時間の蓄積や、そこで過ごした人々の記憶の断片と見事に共鳴しており、単なるノスタルジーではなくドローイングという身体的な行為を通して、場所の固有性をいかにすくい上げ、未来へ継承するかという思考の痕跡です。「湯につかる」という題の通り、見る者を温かく包み込むような作品となりました。
MEMORIAS ― ものづくり工房を併設する図書館 —【空間基本設計コース賞】
黒川 明華 空間デザイン学科

【学生コメント】
この建築を考える中で、環境配慮とは単に性能を高めることではなく建築のあり方そのものを問い直すことだと感じました。設計の途中で迷うことも多々ありましたが、細かい部分まで丁寧にアドバイスいただいたことで考えを整理しながら計画を深めていくことができました。資源の使い方やエネルギーの扱い方を考える中で「つくること」よりも「つかわれ続けること」への意識が強くなりました。また、建築が人に何かを強いるのではなくそこにいてもいいと感じられる空間を作ることが、結果として建築を大切に思う気持ちにつながるのではないかと考えるようになりました。本計画は指導を通して得た気づきの積み重ねによって形づくられたものであり、建築と人そして環境との関係を改めて考える貴重な経験となりました。
【指導教員<眞野 サトル>コメント】
梅田の都心部において、「知の蓄積(図書館)」と「創造(ものづくり工房)」を融合させるプログラムに挑んだ力作です。特筆すべきは、シリンダーが回転するような動的な平面計画。RC造による構造体が、迷宮的でありながら多様な居場所を生み出しており、元公園の特性を活かした「どこからでも通り抜けられる」公共的な動線計画と見事に調和しています。また、地下恒温層を活用した地中熱利用など、環境配慮への視点も現代的です。何より、その複雑かつ豊かな空間構成を、熱量で模型として表現してくれました。「MEMORIAS」という名が示す通り、都市の記憶と人々の活動が交錯する、新たな公共空間として居場所の提案となりました。
風の通る本棚 — ものづくり工房を併設する図書館 —
成田 一樹 空間デザイン学科

【学生コメント】
卒業設計では、「人と空間が緩やかにつながり、新たな活動や交流が生まれる場」をテーマに、光や風、動線を丁寧に取り込んだ図書館を計画しました。中央の階段を軸に二棟を配置することで、人の流れが自然と交差し、滞在そのものが価値となる空間を目指しています。制作の過程では、建築が持つ可能性の大きさと同時に、考え続けることの難しさを何度も実感しましたが、その度に先生方からいただいた助言に支えられ、自分なりの答えに辿り着くことができました。これまでご指導くださった先生方に心より感謝申し上げます。卒業後も学び続ける姿勢を忘れず、人の記憶に残る建築を生み出せる設計者になりたいと思います。
【指導教員<鍵谷 啓太>コメント】
今年度の空間基本設計コースは「ものづくり工房を併設する地域図書館」をテーマとした設計を行った。成田君は前期から地道に努力を重ね、エスキス→スタディ(模型・BIM検討)→製図と、着実に設計を完遂させた。この試行の蓄積を厭わず淡々と実行できることが、彼の最大の強みである。設計はいたってシンプルで、フレキシブルな使い方を想定した二つのブロックに挟まれた大階段が半屋外的なバッファゾーンとして動線と環境を形成し、さらにその先には木構造のひさしによるポルティコが、ゆったりとした空間を構成する。最後の最後に現れた「万博の大屋根リングの転用」というアイデアを含め、「カッコイイ空間とはこういうことだ。」を彼らしく、端正にまとめ上げていると感じました。
五角形の道の駅【構造・施工賞/自由創作コース賞】
坪倉 夢輝 建築施工学科

【学生コメント】
今回の卒業設計では「地域の中心」と「観光スポット」の二つの大きなコンセプトを立て設計しました。構造部材にはCLTを使うことで木造では出来ない広い空間を作る事ができ、地域の人が使いやすくゆったり過ごせるように意識し設計しました。また、平面は五角形、壁を斜めにすることで外観だけでも観光スポットになるようにしました。その分、内部の間取りを考える事は難しかったですが自分の考えていた内容をしっかり落とし込めたのでよかったです。模型製作でも壁が斜めになっている分、立ち上げることが大変でしたがイメージしていた形にできたのでよかったです。設計途中でのコース変更や独特な形の設計でとても大変でしたが、いい経験ができたのでよかったです。このような複雑な設計を最後まで指導して頂いた山本先生に感謝したいです。
【指導教員<山本 順也>コメント】
当初は「木造コース」で始まった、1回目のエスキスを確認した時点にコース変更になり、本人に複雑な気持ちの「卒業設計」に・・・、それでも彼はコンセプトを立て直し地域活性を踏まえた設計計画をすすめていき五角形の形状を基盤とし、見せることや印象に残るベースが完成しました。「建築施工学科」だからといった課題の捻出にも答えてくれたと思います。構造面やコストなど配置に計画での構造部斜面形状にした壁での階段などの取り合いなど設計段階の問題点や建具の納まりエレベーターなどの設備も含めて意識しながらこの卒業設計への取り組めたことを評価できる作品となりました。
もの作りスペース付き二世帯住宅【構造・施工賞/木造施工管理コース賞】
黄 子健 建築施工学科

【学生コメント】
自分を育てられた町は日本の町と違って、一軒家という一棟独立の住宅はめったにない存在です。日本に来て初めてこのタイプの住宅の良さを感じました。今回の卒業設計のコンセプトが「家族、趣味、住みやすさ」三つのテーマから自分を住みたい建物を設計しました。自分は家族が近くにいるのが大事だと思えるが、社会人の立場になると毎日一緒になると家族関係が悪くなる可能性もあります。そのために今回の設計は二世帯住宅の形式を採用しました。子持ち夫婦と老夫婦別々生活空間を確保した上で、すぐに助け合えることも考えました。趣味の方は家族共用の庭、ものつくりできるスペース、日当りがいいテラスなど。世帯別の生活動線を確保、CLT床組みで無柱の大空間LDK、お客様も対応できるような設計にしました。
【指導教員<山本 順也>コメント】
最初のコンセプトはただの「2世帯住宅」でした。来日して日本の住宅自体の存在が先にあり、テーマが大きく決まった中で「ものづくりスペース」を追加して始まりました。故郷の香港での生活なども捉えながら自身の立場、家族構成や考えなど様々な思いが詰まった作品になったと思います。作品では計画も含め生活空間や日本独特の在来工法にCFTの混構造や屋根などの納まりや景観にも対応した設計が所々に彼の持ち味を感じるところもあり、将来の生活スタイルも取り込んだ最高の卒業設計の作品になったと思います。
宿泊機能付きの運動施設【建築施工管理コース賞】
史 虞千 建築施工学科


【学生コメント】
今回卒業設計の原点は、今後一級建築士製図試験の予備知識を蓄積するために考慮しました。日常生活を踏まえたデザインにとし、盤上の様なグリッド(横7m*縦6m)の中に埋め込むことにしました。合理性や動線だけではなく、法規制もの検討も行った。敷地面積が広いため、屋外空間も初めて想定したので、挑戦と言わざるをえません。プランニングから施工図まで更に見直しも指導教員から詳しく丁寧な説明と助言をいただいて本当にありがたい勉強時間になりました。最終の模型部分に辺り、作品が800mm範囲内に制限されたため、敷地広さを考慮し1/150スケールで設定し、材料積算と購入が積算授業実践として面白かった。けど元職人の自分にとって、技量不足の上に品質管理と工程管理を両立する矛盾も改めて実感しました。以上をまとめると、作品は人生の結晶と言っても過言ではない。この機会にお見せできることを光栄に思います。完成させてくださった関係方々に感謝を申し上げます、本当にありがとうございます。
【指導教員<>コメント】
建築施工学科、「建築施工管理コース」の卒業設計課題の主な目的は、2点です。1つ目は、1級建築士の設計製図試験に必ずや役に立つ知識を習得すること。2つ目は、鉄筋コンクリート造を理解し、コンクリート寸法図、総合仮設計画(足場割付含む)、基礎コンクリートの拾い出しと現場で必須となる事項を習得すること。この2つを最大限の目標に掲げ、彼の作品は目標をコンプリートできたと思います。特徴は趣味のウェイトリフティングを満喫できる場を、自ら考え宿泊機能を完備した建物空間となっています。試合場のスペースを無柱の大空間で配置し丘柱を避け、それぞれ無柱間の柱に架かる大梁を大断面のプレストレストコンクリート梁とし、構造的にも考慮された建築構造計画となっています。模型にも力を入れ、よく頑張ってくれました。
複合図で地下を見える化【土木賞/道路設計コース賞(地下埋設物調査)】
廣瀬 来稀 土木工学科

【学生コメント】
私は卒業後、道路会社への就職が決まっており、将来の業務に直結する内容を学びたいと考え、卒業設計のテーマに地下埋設物調査を選びました。本設計では、各管理者の資料を基に地下埋設物を一体的に把握するため複合平面図・複合断面図を作成するものでした。研究を進めて行くほど、地中には水道・下水道・ガス・通信など、私たちの生活を支える多くのライフラインが存在していることや各資料を解読し、計算する難しさを知りました。複合図が正確でないと、工事の際に埋設物との接触が多発し、断水や通信障害、さらには重大事故につながります。この経験を今後の実務に活かし、安全な道路整備に貢献したいと考えています。
【指導教員<川西幸男>コメント】
本作品は、地下埋設物調査という実務に直結するテーマを的確に捉えた非常に完成度の高い卒業設計である。各管理者が個別で保管している埋設物情報を整理し、複合平面図・複合断面図を作成することは、生産性の向上および安全確保の観点からも極めて重要である。本作品では、複合図により地下埋設物の『見える化』を実現した点を高く評価したい。埋設物の深さおよび水平位置についても各埋設情報と複合図との整合性が十分に検証されており、あわせて計算根拠も明確に整理されている。実務においても即戦力としての活躍が期待される内容である。
道路路線設計【道路設計コース賞(路線設計)】
宮下 千毅 土木工学科

【学生コメント】
本設計では、標高差のある山頂へ向かう延長300m、全幅10mの道路計画に取り組みました。まず地形図からルートを選定し、測量データに基づきExcelで地盤高計算、AutoCADで現状縦断図を作成しました。縦断計画では土工バランスに配慮し、計画高計算や縦断曲線の算出を行いました。横断図作成では、Excelで作成したコマンドを活用しCADでの描画を効率化。各断面に切土1:1、盛土1:1.5の法面を構築し、面積計測機能を用いて土量計算書および土積図を完成させました。一連の工程は非常に困難でしたが、横断図から面積を導き土量計算へ繋げる手法には強い感銘を受けました。苦手だったCADも先生の熱心なご指導で理解が深まり、社会人になっても技術向上に励みたいと決意しています。
【指導教員<野瀬 孝男>コメント】
本設計では、CAD製図、情報処理、測量学、施工学、総合演習や施工実験実習等の入学以来学んできた知識を統合した集大成となっている。地形図から等高線を読み取り、ペーパーロケーションによる、縦横断計画、土量計算に至る一連の実務プロセスを完遂した。300mの直線道路の計画ではあるが、Excelの計算機能やAutoCADの計測機能を高度に活用し、正確な図面作成と数量算出を行っている。これまでの学習成果を実務的な設計手法へと昇華させており、卒業後に技術者として歩み出すための確かな基礎力が示された内容である。
道路交差点設計【道路設計コース賞(交差点設計)】
福元 遥斗 土木工学科

【学生コメント】
本作品は、私たちが日ごろ頻繁に使用している平面交差点の設計です。与えられた交通条件をもとに、交差点で渋滞が発生しないよう、信号の長さを調整するなどして計算した上で、交差点の幾何構造を決めました。一番苦労したポイントは、平面図の右折・左折導流路を描く部分です。内側半径・外側半径・緩和曲線の半径を算出し、それらを組み合わせて描いています。是非交差点の真ん中に着目してみてください。
【指導教員<広瀬一樹>コメント】
この作品は、ある交通流を想定し、その交通流を捌くことができるような交差点を設計するという、土木のソフト面である「交通工学」をメインとしたものである。信号現示をトライアル計算により調整し、需要率を下げて交通流を捌くことができる交差点が設計されている。一方で、ハード面についても、道路幾何構造は道路構造令に準拠されており、苦労した導流路も正確に描かれている。ハード面とソフト面の両方が考慮された、現実の設計に近い作品であった。
道路路線設計CIM【道路設計コース賞(路線設計CIM)】
大下 鼓太郎 建設エンジニア学科

【学生コメント】
本課題での一番頑張ったことは、自分の作った施工要領書を相手が見た時にわかりやすく伝えられるか工夫することを頑張りました。しかし、私には現場経験がないので、数ある工法の施工要領書を作成するには、教科書やインターネットでたくさん情報を集めることが大変でした。そして、調べたことをどう分かりやすく施工要領書で伝えるか悩みました。特に、分かりやすいイラストを作成することで、本来は文字だけの文章でも現場作業員さんに伝わりやすい資料を作れるよう工夫しました。それでも未知の工法は僕にとっては難しい問題でしたが、先生の助言もあり、うまく表現できたと思います。
【指導教員<穴吹 勇樹>コメント】
実際の施工管理業務では、図面や各種資料の作成、作業手順を的確に把握しておくことが不可欠です。本コースでは、CIMを用いた図面作成に加え、その現場を施工するための「施工要領書」の作成にも取り組みました。
現場経験がない、あるいは経験の浅い学生にとって、作業の流れや施工時の危険箇所を具体的に想定することは容易ではありません。そのため、本課題では、自ら現場状況を想像し、テキスト等を参考に調査を行い、その内容が今回の図面に適しているかを検討した上で表現する力が求められました。
大和田中央公園整備計画~街のアオシス~【造園賞】
LEE CHARLES ANTHONY ガーデンデザイン学科


【学生コメント】
町の住民すべてが気軽に立ち寄り、世代を超えて交流できるような開かれた空間をつくることを目的としました。特に、若い世代と年配の方々が互いに自然に関わり合えるような環境を整えることで、地域全体のつながりや安心感を育むことができると思いました。そこで図書館とカフェを導入することにしました。子どもたちが勉強に対して前向きな姿勢を持ってほしいという意図で図書館を取れ入れています。カフェは広場に面しており、散歩の途中や買い物帰りにも立ち寄りやすい配置としました。 飲み物を片手に会話が生まれることで、初めて会う人同士でも交流しやすくなることを期待しています。 こうした空間を通して、日常の中で人と人がゆるやかにつながる町を目指しました。
【指導教員<松田 泰行>コメント】
本計画は「街のオアシス」という分かりやすいテーマのもと、日陰や休憩場所の不足といった現状課題を的確に捉え、誰もが立ち寄りやすい公園像を提示している点が評価できる。図書館とカフェを組み合わせた施設構成は滞在性と交流を高め、公園の公共性を意識した提案となっている。ゾーン名称も親しみやすく、利用イメージが想像しやすい。一方で、計画全体を象徴する決定的な空間や体験がやや弱く、ゾーン間の関係やスケール感、防災・安全面への配慮が十分に示されていない点が課題である。公園の核となる価値を明確にし、空間構成と機能の関係を具体化することで、より説得力のある計画になると考えられる。
大和田中央公園整備計画~Re:Connect Park~【設計コース賞】
REINHART CHRISTOPHER YONG TANUDJAJA ガーデンデザイン学科

【学生コメント】
コンセプトは、現在の空っぽで古くなった公園を、より現代的でオープンな空間にすること。
屋外活動を促進し、全世代、特に地元住民が使える施設を追加しました。
主な変更点は、既存の遊具を除去してレンガの道を敷き、コンビニ、カフェ、自転車置き場などを新設。
状況を考えるとよくできたと思いますし、作ったものが誇らしいです!
【指導教員<松田 泰行>コメント】
本計画は「人々を再びつなぎ直す公園」という明確なコンセプトのもと、現地調査に基づいて課題を整理し、世代を超えた交流とにぎわいを生み出そうとする姿勢が評価できる。SEASONAL・FLOWER・OPEN・PLAZAといったゾーニングは分かりやすく、花の年間計画や芝生化による開放的な空間づくりなど、利用イメージが具体的に示されている点も完成度が高い。一方で、飲食店やコンビニ導入による商業性と、公園としての公共性のバランス、防災や安全面への配慮が十分に示されていない点が課題である。また、樹木削減に伴う暑熱環境への影響についても検討の余地がある。公共空間としての基盤的機能を補強することで、より説得力のある計画になると考えられる。
大和田中央公園整備計画~未来を意識~
和田 諒真 ガーデンデザイン学科

【学生コメント】
大和田中央公園は、日陰はあるものの、夏場の暑さが厳しかったため、暑さをしのぐことが出来る図書館と四阿と新しく設置したいと思った。また、西淀川区の海抜が低いことに着目し、水害時の一時的な避難所として、津波避難タワーも設置したいと思った。静岡県伊豆市の『テラッセオレンジトイ』を参考に、図書館と津波避難タワー、両方の機能を備えた津波避難複合施設を建てた。住民に安心感を与え、快適に過ごしてもらえる公園になればいいと思った。また、全体的に緑が少ないと感じたので、全面コウライシバで覆い、花時計も造ることで、小学校の隣にある公園として相応しい明るい公園にすることが出来た。
【指導教員<松田 泰行>コメント】
本計画は、公園利用の実態や暑熱環境、津波浸水想定といった地域課題を的確に捉え、図書館と津波避難タワーを複合させる発想により、日常利用と防災を結び付けている点が高く評価できる。特に子どもの年齢別利用を考慮した図書館計画や既存樹木を活かす姿勢は説得力がある。一方で、建築・広場・植栽の面積配分や避難高さ・人数など、防災施設としての具体的な数値や空間構成が十分に示されておらず、公園全体の使われ方をより明確にする余地がある。
大和田中央公園整備計画~MOKU PARK~
宋 牛男 ガーデンデザイン学科

【学生コメント】
本作品は、都市の中で人々が自然と触れ合いながら心身を休められる公園を提案しました。曲線ベンチを配置することで、滞在しやすく、日常的に利用される空間を目指しています。また、SDGsの目標3・11を意識し、健康促進や持続可能な都市環境の形成にも配慮しました。この制作を通して、木が持つ温かさと公共空間の新しい可能性を伝えたいと考えています。
【指導教員<松田 泰行>コメント】
本計画は「遊び・繋がる・育つ」という明確なテーマのもと、G1〜G9までのゾーニングを通じて多様な行動と体験を丁寧に構成しており、公園全体を回遊しながら楽しめる完成度の高い提案である。スロープや段差、曲線ベンチなど立体的な空間操作に加え、鳥瞰図やレンダリングによる表現力も高く、利用イメージが具体的に伝わる点が評価できる。また、多世代利用や維持管理への配慮も見られ、実現性を意識した設計姿勢がうかがえる。一方で、ゾーン数が多いため計画の核となる象徴的空間がやや分散しており、防災や公共性といった基盤的機能への言及も不足している。計画の中心的価値を明確に打ち出すことで、さらに説得力のある卒業制作になると考えられる。
住み継ぐ家 ~父の設計、娘の更新~【夜間意匠設計コース賞】
宮園 悠 建築・デザイン学科(夜)


【学生コメント】
今回の卒業設計では、私が建築士を目指すきっかけとなった実家のリフォームをテーマに取り組んだ。題材はすぐに決まったが、他の学生のように地域性や社会課題を強く打ち出す計画ではないため、本当に卒業設計として成立するのか、不安や迷いを感じる場面も多かった。それでも設計を進める中で、自分自身の経験や思いと向き合い、それを素直に建築として表現することに意味があるのだと感じるようになった。この設計は、私にとって建築の原点を改めて見つめ直す時間であり、これからどのように建築と関わっていきたいのかを考えるきっかけとなった。いつかこの卒業設計を土台に、実際のリフォームとして実現させたいと考えている。
【指導教員<鈴木 佑輔>コメント】
宮崎県川南町に計画された、作者の生まれ育った生家の改修。世間一般では都市への集中や地方の過疎化など、社会的問題が渦巻いており、その大きな一要素として建築も巻き込まれている。故に、本計画のような地方における住居を考える際、都市との関係性といった社会的ポジションをいかに構えるかということが一般的であるが、計画において作者はほとんどそれについて言及していない。設計を通して家族が住み続けてきた場所を考え直したい。という作者の持つ純粋さによって、住のもつ本来の豊かさを予感しました。現実的な設計においては、多様な趣味で構成された多世帯住居であることや実の父の設計であることといった複雑性を、模型とスケッチで検討している。家族が住み続けてきた場所を考え直したいというテーマに対して、家族の一員である設計者を通して円を囲みながら想像を進める設計は、作者にしか作り得ない住居のあり方を見つけ出せるのではと思いました。
下町の キヲク を引き継ぐ建築 ー集まることが備えになる、日常と非常が重なる場所ー【夜間意匠設計コース賞】
橘武 美沙 建築・デザイン学科(夜)

【学生コメント】
本計画は、かつて下町として人と人とのつながりが自然に存在していた地域において、失われつつある関係性を建築によって引き継ぐことを目的としたコミュニティセンターの提案である。ここでいう「キヲク」とは、個人の記憶ではなく、立ち話や助け合いといった行為が日常の中で共有されてきた関係性そのものを指している。
そして日常的に人が集い、顔の見える関係が育まれることが、災害時の安心や助け合いにつながると考え、日常利用と非常時利用を重ね合わせた空間構成とした。
この卒業制作を通して、動線や配置、断面構成、空間の転用方法といった設計の一つひとつが、人の行動や心理にどのように影響するのかを考え続けることの難しさを実感した。同時に、その積み重ねによって建築に意図や物語が生まれていく面白さを知ることができた。これらの学びは今後の建築に向き合う上での大きな経験となった。
【指導教員<鈴木 佑輔>コメント】
大阪市西淀川区に計画された、地域コミュニティ及びレンタルオフィス等の民間への貸出スペースを含む複合施設の計画。有事には防災の拠点となり、常時のコミュニティ機能としての利用がされればされるほど、有事の備えになるという考えのもと、プランが展開されている。大規模の計画でありながら、計画の立案当初から人間の温度感のある計画がなされており、作者のこの場所への想いが反映されていると思いました。投げやりになろう機能的なディテールに対しても、即時の災害時対応から持続可能性に結びつけるといった当事者目線で計画がなされている。いつかこの計画は実現するのではないかという希望を感じました。それは本計画のように行政、商業、地域という複合的な要素がそれぞれの目的を果たすだけでなく全体と補完するという考え方が、従来営まれていた地域コミュニティに近い性質を持っているからであり、かつての地域コミュティの本質を体感した作者であるからこその提案であると感じました。
コミュニティルーム【課題指定コース賞】
鈴木 賢志 建築・デザイン学科(夜)

【学生コメント】
公園の景色を見ながら本を楽しむ憩いの場、コミュニティセンターとして図書室を設け、本を楽しむ場として設計しました。1階にはメインとなる図書室を計画し、2階には、借りた本や持ち込んだ本を落ち着いて読むためのラウンジを2室設けています。これらのラウンジは、建物のまわりに広がる二つの公園の景色を眺めながら読書を楽しめる場所としました。また、会議室や和室も設けており、さまざまな用途に対応できるようにしています。子どもから高齢の方まで、だれもが心地よく利用できる空間を目指しました。屋上にはテラスも設けており、周辺一帯の公園の緑になじむように計画しており、風にあたりながら、公園で遊ぶ子どもたちの笑い声を感じつつ、本を過ごすことができます。
仕事で扱ってきたRevitの経験から、卒業設計はすべてRevitで仕上げました。
無事に形にできて良かったです。2年前は「梁」の名前すら知らず、図面も描いたことがないレベルでした。そこからBIM技術まで用いて、よくここまで作り上げられたなと自分でも感心しています。
【指導教員<増田 和浩>コメント】
夜間の卒業設計課題指定コース、コミュニティセンター(鉄筋コンクリート造)を公園の緑豊かな環境を最大限に活かし、1階の図書室を核としながら、2階の眺望豊かなラウンジや、風と音を感じる屋上テラスといった「読書の質」を深める多様な居場所が丁寧に計画されており、子どもから高齢者までがそれぞれの距離感で本と自然に親しめる、地域に開かれた温かい交流拠点となっています。憩いの場としてのコミュニティセンターをうまく表現してくれました。
豊中市役所 本庁舎・別庁舎再編計画
辻 壮一郎 建築・デザイン学科(夜)

【学生コメント】
豊中市役所の再編をテーマに、9階建ての本庁舎と4階建ての別棟からなる「市民と行政が溶け合う拠点」を提案した。行政機能を集約した高層棟と、交流を支える低層棟を対比させ、公共建築としての威厳と地域に馴染む親しみやすさの両立を図った。制作では全行程にRevitを採用し、3次元的な視点から複雑な動線やボリュームを検証した。今回は特に意匠とゾーニングに注力し、図面だけでは見えない視線の抜けや空間の質を追求したことで、建築が街に与える影響を深く考え抜くことができた。この半年間の試行錯誤は、春からゼネコンの施工管理として実務に携わる上でも大きな糧になると確信している。建築を形にする責任と情熱を胸に、今後も精進したい。
【指導教員<倉増 音>コメント】
本提案は、市役所・議会所・図書館からなる複合施設の建替え計画である。筆者自身が日常的に利用してきた経験を踏まえ、従来のゾーニングや動線への課題意識を出発点としている点に主体性が見られる。大規模なボリュームに対し、明快な縦動線を設定し、各階南面に街へ開くテラスを設けることで、閉鎖的であった市役所を市民に開かれた場へと再構築している。また、二階テラスで三施設を接続し、広場を介して周遊性を確保した点も評価できる。固定化した庁舎像を丁寧に解き直した意欲的な設計である。
人間建築
畠山 勁志 建築・デザイン学科(夜)
【学生コメント】
大きな責任を伴う、“建築をつくる”という行為において、その責任を果たすことは、建築の意味や価値を見出し、表現する事であり、それを考えることが、“建築を設計する”という行為の本質ではないだろうかと感じた。
すべてのつながりのなかで存在する人間性と建築性。建築を通して、社会、経済、環境などを考えること。人間・自然・社会と共に成長する建築の可能性の探究し、愛のエネルギーと自己表現がもたらす喜びを綴った随筆。
【指導教員<倉増 音>コメント】
本論文は、建築の存在意義を根源から問い直す意欲的な試みである。マズローの欲求階層理論を手がかりに、建築の発生から現代に至るまでの在り方を整理し、今後の建築の必要性を考察している点は評価できる。とりわけ、「超越」の概念を建築にどう位置付けるかという問題設定は明確であり、最終的に建築家の役割を15項目に整理した点も論旨の具体化として妥当である。本考察が筆者自身を鼓舞する契機となっている点も、本論文の価値といえる。