「帰りたくなる家」をつくるのが目標。
「クライアントの舞台」をつくる。
幅広いものづくりに携わる心がまえ。
三好:大下さんは現在どんなお仕事をされているんですか?
大下:今手がけているのは、住宅だと3階建の木造住宅のリノベーション、店舗では牡蠣専門の居酒屋さんの設計ですね。基本的にデザイン、設計して工事まで行います。私自身の仕事としては、プランを考えてクライアントと打合せを行い、工事の金額やスケジュールを決めて、あとは会社のスタッフや外部の協力会社にお任せします。
沖田:実際に働かれている現場のお話にすごく興味があります。最初から、住宅と店舗といった幅広いお仕事をされていたんですか?
大下:仕事をしていくにつれて幅が広がってきた感じですね。学生時代は「住宅を建てる設計士になりたい、卒業して経験を積んで一級建築士の資格をとって…」と考えていましたが、20代で独立して店舗の設計をしてみると、こちらも楽しいなと。雑誌に取り上げられたりするとうれしいですし。現状は、住宅もしながら店舗の設計をしています。店舗だと、スタッフのユニホームやお店のロゴデザインなど、必要なものは全部デザインを統一したほうがお店のイメージづくりにもいいのではないかと考え、業務の幅が広がりました。
三好:すごく幅広いデザインをしていらっしゃるんですね。お仕事をするときに心がけていることはありますか?
大下:「お客さま(クライアント)の舞台をつくる」という考え方ですね。何の仕事をするにしてもそうですが、クライアントに対して何かを提供する限りは、この意識が必要だと思います。クライアントがいかに輝けるか、そしてそのクライアントの顧客がいかに満足してくださるか、そこを私たちが考えてデザイン・設計することが大事です。私はアーティストではないですから、自分が表現したいことをやっているだけではいけません。
阪井:すごく大事なお話ですね。どうしても「自分が」こうしたい、ああしたいとなってしまいがちです。私も春からの社会人生活で今のお話を忘れないようにしたいです。お仕事のやりがいを感じる瞬間はどんなときですか?
大下:好きな仕事をしているので、日々やりがいはあるんですけど、自分が考えてクライアントと打合わせて、できあがったものを喜んでもらえることですね。クライアントが店舗だと、「来てくださったお客さまに『このお店いいね』と言われたよ」と言われるのがいちばんうれしい。先ほどお話しした心がけが、結果となって現れる喜びがとても大きいです。
沖田:お店のお客さまがほめてくださるのはうれしいですね!でも、やっぱり苦しいこともありますよね?
大下:もちろんありますよ。夜遅くまで図面を描いたり、工事中も図面どおりにいかないこともあったりして、たくさんの人に協力してもらうこともあります。でもクライアントに喜んでもらえたら疲れは忘れてしまうので、また次の仕事に向かっていきますね。
沖田:修成を卒業するときには、どのように就職先を決めたのですか?
大下:設計がしたかったことはもちろんなのですが、遊べる余裕も欲しいなと思って、いちばんお給料が良かったところに(笑)。
三好:それも大事なことですよね!
大下:設計職でいい会社に就職できたんですが、1年間はずっと現場で施工管理でした。先輩が描いた図面の現場に行って。その会社には1年半ぐらい勤めました。30歳までに独立するという目標があったので、その後はステップアップのために何度か会社を変えました。
沖田:独立という目標に向かってキャリアを積まれてきたんですね。とても勉強になります。
三好:2020年に東京オリンピック・パラリンピックが開催されることになりましたが、建設業界は忙しくなっているんですか?
大下:徐々に忙しくなってきていると思いますよ。私も東京での仕事が増えてきています。
阪井:これからどんどん忙しくなるのでしょうか?
大下:東京オリンピック・パラリンピックに向けての一過性のものだとは思います。でも楽しい仕事はたくさん出てくるでしょうから、東京で勝負したいと思うなら、今が決断する時期なのかなと思いますね。私は東京の仕事は好きですが、やはり生まれ育った大阪に根ざしてやっていこうと考えています。
沖田:業界の動向や、自分がやりたいことを見極めることが重要なんですね。
三好:これからちょうど進路を考える時期なので、参考にしたいと思います。