北島:私も鉄を上手に取り入れた建物はかっこいいと思います。大下さんは鉄のどのあたりが好きですか?
大下:鉄は硬くて冷たい印象がありますが、インテリアに取り入れてみるとキラキラと美しいですし、それから錆びた鉄なら木のような温かさがあります。鏡のふちや扉などに鉄を取り入れているんですよ。ちなみにミラーボールはお店のロゴにも使われています。
北島:大下さんがつくられたミラーボールがお店の顔なんですね!
大下:いえいえ、さすがにそこまでは言えませんが(笑)。このミラーボールがお店に少しでも貢献していればうれしいですね。それから、他にこだわったポイントと言えば、たとえば…この床。もうおわかりですね。
山本:エイジング加工ですね!
大下:そう! HONU COFFEEさんでも導入していたアンティークな味を出す加工方法です。ミュージックバーKanaさんでは、床や壁の他にもガスメーターまわりやダクト、消火栓ボックスなどにもエイジングを施しています。
三好:こんなところにも手を加えているんですね。ガスメーターがすごくおしゃれに見えます!
大下:いったん全体を白く塗ってからスポンジなどを押し付けて、古く見える加工を施しています。
山本:すごい! 職人さんの技術が光りますね!
大下:さすがでしょ。私からのこんな細かい要望を受け入れてくださる職人さんたちには、本当に頭が上がりません(笑)。建築士やデザイナーだけでは、絶対に建物や空間を完成させることはできませんからね。良いものをつくるためにも職人さんとの関係は本当に大切です。ちなみに、このお店の施工でお世話になったタイル屋さんとは、かれこれ15年以上の付き合いになります。
三好:私も日々、先生から建設業界は人と人とのつながりが大切だと教わっています。
大下:みなさんも社会に出たら、協力してくださる職人さんや一緒に働く先輩や同僚への感謝を忘れずに仕事と向き合ってくださいね。周りを大切にしない人には、仕事は絶対に回ってきませんからね。
北島:つくづく勉強になります! 施工管理に進む同級生とは、たくさん友だちになっておきます!
大下:それも大切(笑)。
一同:(笑)。
大下:さて、今日は私が設計やデザインに関わった二軒のお店を見学しましたが、どんなことを感じましたか?
北島:私は、自分が手がけた建物を見に行けることは建設の世界で仕事をする大きな魅力のひとつだと感じました。私もいつか、大下さんのようにステキな建物や空間を設計して、「これ私が設計しました」って言ってみたいです!
山本:それ、私も言ってみたい! 「これ、私がつくった庭!」って(笑)。がんばりますよ!
大下:(笑)。どんどんつくって、どんどん言ってください。それもこの業界で仕事をする醍醐味のひとつですからね。それに、自分があれこれ頭を悩ましながらつくった図面がやがて建物になる。この感動は本当に言葉になりません。そして、その建物に人が集まり、暮らしを育んでいく…こんなに壮大でやりがいに満ちた仕事はなかなかありませんよ。
三好:私は先日、橋梁設計の会社から内定をいただきました。卒業後は、大下さんから教えていただいたように、人とのつながりや自分が手がけた建物への誇りを大切にしながら、いっぱいステキな橋の建設に関わっていきたいと思います。そして、その橋が街の人々の暮らしを豊かにしていければ最高ですね。それからもちろん、私も…自分が手がけた橋を渡ってみたいですね(笑)! なんだか、すごくワクワクしてきました!
北島:うんうん! 私たちの若い力でどんどん建設業界を盛り上げていきましょう!
大下:がんばれ、次世代のけんせつ小町たち! これからも、ますますこの世界で働く女性が増えていきますし、私がそうだったように、その気になって一生けん命やれば性別の差で困ることなんてないはずです。私も同じ業界でみなさんと切磋琢磨するライバルです。一緒にがんばりましょう!